そこで、私の本『環状島=トラウマの地政学』をとりあげていただき、私も取材を受けて、他にお勧め本なども紹介した。
震災後しばらくは言葉が出ないが、そのうち人は語りたくなるし、また読みたくもなる。その時に、自分の立ち位置とか相手との関係性をきちんと考えながら、言葉を扱っていくことが大切なんだと思う。
環状島モデルは、私自身の臨床経験や研究・教育経験をベースにつくったものだが、今回の東日本大震災で、このモデルの有効性を改めて感じている。
同時に、モデルで用いた<爆心地>や<被爆><同心円><波>といったメタファーが、地震と津波と原発事故という多重の災いにおいて「現実」となってしまい、メタファーとして用いるのが困難になったことに、深い悲しみを感じている。
震災のトラウマをめぐっては、個々人の物理的位置や距離、心理的な位置や距離、そして「溝」を考えずに語ることは不可能だろう。TV映像などによる「距離の撹乱」の影響も大きい。
また、時間的に変化していくことを認識しておくことが重要であり、震災からの「復興」がもたらす傷つきについても深く考えることが不可欠だと思う。
東日本大震災という、私たちがおかれている新しい状況の中で、環状島モデルを鍛えていきたいと思う。